春欄の山

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近場の山では春欄が咲き出している。静岡産の私は子供の頃から、裏山でよく見ていたから春欄は好きな花だ。この春欄が不思議なほど私を呼ぶのだ。私が春欄を好きなのを知っているのだと思える時がある。

私が坂道を歩いていて疲れて立ち止まると、必ず春欄があり、必ず春欄と目が合う。春欄が私に「見ていってよ」と言っているようだ。

だからと言って春欄が何処でもある訳ではない。探したってやたらと見つかるものでもない。私が春欄のある場所を知っている訳でもない。私に見て欲しくて私の足を止めるのだと思っている。

私が春欄が好きだから、すぐに見つけられるだけなのに、春欄に呼ばれているような気になって、上機嫌で山道を歩くと足の軽さが違うのだ。

この季節は椿が満開だと喜んだり、小さなすみれを見つけ、あの何とも言えない紫の色が山の中で花の女王様になったりする。山つつじのつぼみは見る度に大きく膨らんでいる。

木の幹や木々の葉や木の実や花を見ていて飽きることはない。いつも同じ顔をしていることがない。

春欄が咲く頃はいい、しかし春欄の大株はほとんどない。それは根こそぎ盗まれ採られてしまったからと言う。わずかに残った株がやっと花を咲かせるようになったのだ。山で咲く花は山の中で咲いているのが一番きれいに見える。

山の花を採るな、採るな。私は山で花は可愛くて採れない。採るなら、写真に撮れ。

山の花は立ち止まって見るだけで楽しい。

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